日本の国石(ひすい)
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ひすい(ひすい輝石およびひすい輝石岩)
ひすい輝石やこの鉱物からなるひすい輝石岩は、日本列島のようなプレート収束域(沈み込み帯)の冷たい地温勾配の環境下でのみ形成されると考えられ 1)、特に細粒でやや透明感をもったひすいは宝石として 高い価値を持ちます。ひすいの産出は約5.5億年前より若い時代の蛇紋岩分布地域に限られ、藍閃石片岩や超高圧変成岩と同様、地球の冷却を示す岩石の一つです。 ひすいを敲(たたき)石として使ったものが、糸魚川市の大角地(おがくち)遺跡から発見され、縄文時代前期前葉の利用例として知られています。縄文時代に国内で加工された大珠は人類初のひすい加工の証であり、以後奈良時代まで利用された勾玉と共に日本史で重要な石であります。その後、日本からのひすいの産出は忘れ 去られますが、1938年に新潟県でひすいが再発見され、翌年に学術論文として公表されます2)。そして現在では、新潟県糸魚川市をはじめ兵庫県養父市、鳥取県若桜町、岡山県新見市、長崎県長崎市など日本各地において 野外で観察できるとともに、法律により保護されているところもあります。ひすいの名は一般の人にも広く知られており、まさしく日本のシンボルであり、国石 としてふさわしい石と認められます。
1) Harlow G.E., Tsujimori T., Sorensen S.S.(2015) Jadeitites and plate tectonics. Annual Review of Earth and Planetary Sciences, 43, 105-138.